荷重移動
そもそも荷重移動とは何でしょうか?国語辞典を引いてみると荷重とは「物体に外からかかる力」、移動とは「うつりうごくこと、場所がかわること」とあります。ふたつを足せば「物体に外からかかる力の場所がかわること」となりますね。身近な例でいうと、体重計を2つ用意して左右の足で別々に乗ってください。両足で乗って左右足せば自分の体重になりますよね。その状態からどちらか片方、例えば左足に多く体重を乗せるように体を傾けてください。すると当然、左側の体重計の値は増え、右側の値は減りますよね。こういう状態がまさしく荷重移動なのです。物体=体重計で考えてみてください。
車に置き換えて考えてみましょう。静止状態では荷重移動は起こっていません。わかりますよね。さてエンジンをかけて前進しましょう。まっすぐ加速していく状態というのはフロントが浮いて、リアが沈んでいますよね。つまりフロントの荷重が抜けた分、リアに荷重が移ったと理解してください。前方に右コーナーが見えてきました。当然ハンドルは右に切りますね。回転しようとするものには遠心力がかかりますね。車は左側へ行きたいのにそれを無理やり右に行かせるので車は傾きますよね。いわゆる「ロール」した状態です。この状態では左側のタイヤにより多くの荷重がかかっているのがわかると思います。
このように車は動きつづけている限り荷重移動が起こっています。気にしていれば必ず体感できると思います。このように荷重移動というものは自然に発生していますが、ドライバーである人間が上手く使う事によって上手く曲がったり止まったり、そして速く曲がることが出来るようになるんです。
ここで体重計の話しに戻りますが、ゆっくり動けば左右の合計値があなたの体重ですよね。仮に体重を60キロとしましょう。そこでわざと力を入れて足を踏み込めば体重以上の値が表示されますね。つまり重量自体は60キロしかないのに荷重のかけ方によってはそれ以上の力をかけることが出来るのです。その体重計が100キロまで計れるとすれば101キロの荷重はその体重計の限界値を超えた値と、捉えることが出来るでしょう。
車に置き換えてみると、ブレーキを踏めば前輪に荷重がかかります。踏みすぎてタイヤがロックしている状態というのは、そのタイヤにかけられる荷重の限界を超えてしまっているということなのです。つまりタイヤにかけることの出来る荷重は状況に応じた限界があり、その中で上手く荷重をコントロールしていくことが速く走行することに繋がるんです。
では荷重のコントロールはどのようにすればいいのか?コントロールするためには「荷重」そのものを実感しなくては話しにならないでしょう。まずは荷重がどのタイヤにどのくらいの割合でかかっているのか考えながら走行する癖をつけてください。
フロントエンジン車として停止状態なら前輪60%、後輪40%の重量比と仮定しますね。さらに左右に分けると左前30%、右前30%、左後20%、右後20%となりますね。直進加速なら前輪30%、後輪70%として左前15%、右前15%、左後35%、右後35%ってことですね。さらに右コーナーリング途中なら一番荷重のかかるのは左前、ここを60%とすると右前20%、左後15%、右後5%ぐらいのイメージですね。
このように荷重は様々に変化しますし「変化させることが出来る」のです。変化させること=つまり、どこにどのくらいの荷重をかけてやるか?はタイヤのグリップ力、コーナーの曲がりぐあい、進入スピードによって変化するので一概には言えませんが、その変化を細かく調整して走行できる人が、速いコーナリングが出来る人と言えるでしょう。
荷重移動がしやすい車とは? ズバリ、ノーマルな足の車でしょう。ノーマルってのは柔らかいですよね、基本的に。柔らかいと言う事は荷重移動に必要なピッチング(前後の動き)やローリング(左右の動き)が簡単に出せると言う事なんですよ。ガチガチの足で荷重移動が上手く出来ないのは当たり前です。硬い足というのはストローク量が少ないですから、当然荷重移動もその少ないストローク量のなかで行わなくてはなりません。しかも「硬い」と言う事は荷重移動のスピードが速いですから、あっというまに荷重がかかったり抜けたりしてしまうのです。だからノーマルの足できっちり出来なければ硬い足ではまず無理だと思います。
最後に、サイドブレーキを使わずに車を意識的にスピンさせる事が出来れば、荷重移動を理解し、実行できるレベルにあると言えると思います。