コラム > 2010/12/09 ミスマッチ

ミスマッチ

一般的に良いモノは高価だし、それなりのモノはそれなりの価格。購入者が納得できればどっちもアリですよね。ブランド店で安く済まそうと思う人はいないでしょうし、高級品を買うつもりで100円ショップに行く人もいないよね。価格と品質が「わかる店」なら問題無いと思います、問題はそれがよくわからない店、というか業態。ええ、クルマ業界ですね(笑)

ここにショップとユーザーの距離感があり、不信感があるんじゃないかと。

当店ではメンテの依頼があると実際の入庫までにメンテの内容、費用などを説明します。来店されての相談もありますし、遠方の方はメールや電話で話を詰めることもあります。そして作業中の様子はオーナーさんが直接見れませんので(クルマを預かっているので)写真を撮ってメールや写真(プリント)で元の状態、交換後の状態などをお知らせしています。その枚数は少なくて数枚(軽微な作業)から多いときは50枚を超えるときもあります。(日記にアップしているのは極一部です) そして引渡し時には交換部品を全てお見せしています。実物を見たらより理解してもらえるでしょうし。

今はデジカメ全盛でメールで送るのであれば費用はほとんど掛かりませんよね、手間だけ。例えプリントしても1枚30円くらいでしょ?50枚プリントしても1500円、このくらいの費用でオーナーに伝えることが出来るのであれば「安い」かと。もちろんオーナーさんには請求しませんよ(笑)

私としては「当たり前」のことです、逆の立場、つまりオーナーにしてみれば「知りたい」と思うんですよね、何がどうなっているのか。店側にしたらいつもの作業でもオーナーにとっては初めてのことだったりするわけで。事実を伝える、それだけで店側とオーナーとの距離は縮まると思います。

私はロドスタのメンテをメインにしていますが出来ることと出来ないことがあります、出来ないことを依頼されたら「できません」と言いますし、別の案、たとえば外注先を紹介する……などを提案します。その場合、この作業は○○で行いますと説明します。

作業内容、費用をキチンと説明する(会話と画像で)、チューニングの場合はメリット、デメリットを説明する。どれも特別なことじゃないですよね、当たり前のことかと。そうです、当店は特別なことは何もしているつもりはありません、ただ当たり前と思うことをしているだけです。それでもオーナーさんと食い違うこともありますよ。なので今の私のやり方でもまだ未熟なのだと。常に「もっとイイ方法」を模索しています。

食い違いとは……例えば1万円出したのに1万円分の価値を感じなかった、とか。これが100円ショップでしたら「100円だから仕方ないな」で済ませられるかも知れませんがクルマの場合まず100円じゃ済みませんからね(笑) たとえ100円でもイヤな時はイヤでしょ?

クルマの場合、金額が張るってこと。ちょっと大きなメンテやチューニングだと数十万かかることはあります。問題はその金額に見合う、言い換えればオーナーが納得できる店が外から見て判断できないってことじゃないかと。100円ショップのように100円のモノだけ扱う、高級ブランドのように高価なものだけ扱う……なら納得ですがキレイな店構えだけど手抜きまくりの店とか(笑)、逆に外観はパッとしないけど職人風な凄腕メカニックが居るとか、クルマ屋の場合そういうケースが多々あります。そんなん外観からだけじゃわかりませんよね。

それとクルマというのは消耗品のカタマリであってメンテやチューニングというのは「人の手」が介在するというのもネックじゃないかと。つまり店構えから仕事の内容、レベルが判断しにくいんですよね。要するに作業者のスキル(能力)が見えないということ。おおよそは予想が付きますけど(目が肥えれば作業場を見ればある程度のことはわかると思います)、一般のお客さんにはわからないのが普通。

「当店は初級レベルの作業です、ですから安価ですが難しいことは出来ません」とか「当店は何でも出来ます、レーシングカーも製作できます」とか言ってくれればわかりやすいですけどね。その中でも前者ですと良心的ですよね、そんなお店はあまり聞きませんけど(笑) 問題は後者、「できる」と謳っていながら「できない」、もしくは「やってない」ケースがあるということ。これはユーザーも痛い目を見るまで見破れません。そしてこういうケースが往々にして多いという事実。これがクルマ屋やチューニング屋の信用が低い原因じゃないかなぁと思うのです。

当店はメンテナンス屋です、開店当初からそう言い続けています。チューニング屋でもなければエンジン屋でも無いしレーシングカーなんて知りません。なのでチューニングもエンジンも依頼されたら今の自分の出来ることを伝え、それでも良いと受け入れて頂ける場合のみ引き受けています。今、当店で取り扱っている以上のモノも世の中にはあるはずです。それでもあえて当店を選んで頂けるなら今の自分にできることは一生懸命しよう、仕上げよう、ただそれだけです。

私も以前はいちユーザーでした。今、店をする側としてどうすれば満足してもらえるかな?と常に考えるわけです。オーナー達の望む価値に応えることができるようになるべく。

たとえ話を1つ。

あるお店でエンジンを組んでもらいました、「何でもできます」とのことで。とりあえず動きます、たまに止まるけど(笑) ネットや雑誌ではこのパーツを使うと○○馬力なのに自分のはこんなもんかなぁ~ お店に聞いても「そんなもんですよ」と言うし。で、別のお店でたまたま見てもらうと「いや、こんなもんじゃないでしょ~」と。そのお店で手直ししたら○○馬力出ました!と。

この場合、エンジンを組んでもらったお店を責めても仕方ありませんね。そのスキルが無かったのですから。そのスキルが無かったことを見抜けなかったことを悔やむべきかと(キツイ言い方ですけどね)。世に言う「授業料」ってヤツですね。そのお店に抗議してもきっと何も得られません、できることは「2度と行かないこと」じゃないかと。

当店はリピーターの方も多いですが(7割くらいかなぁ)1度キリのお客さんもいます、大勢います(笑) だから私は自分が完璧な人間だなんて思いません、思ったことも無いです。気に入って貰えなかったから2回目が無いのでしょうしね。そこは考えなくちゃいけないとこですよね。

でも100人いて100人から「好かれる」必要も無いとも思います、もし100人に好かれることが出来るならそれは本性じゃないでしょ(笑) 私はホンネで関わることをモットーにしています、ですから「合わない」人も出てくるのは仕方ないでしょう。でも「曲げられない信念」がありますからこのスタイルはこのままで。

100人中80人くらいに嫌われているなら問題ですけどね(笑)